ゴトウモエさんパート4

ゴトウモエさんの「すきかちっ」と、これから。

M:Matirog:ゴトウモエさん M今回より始めたウェブマガジン「すきかちっ」は、たくさんの方々に読んでいただきたいのは勿論ですが、特に、起業家精神を持った方や、これから起業を考えている方に向けて配信していきます。さらに限定して言うと、好きなことを価値に変えて、生活が成り立つ方たちです。ターゲットを絞っているからこそ、選ぶ言葉も明確に絞っていくため、ピンポイントで読者の耳に届き、心を射抜くかなと思っています。
そこで今回は、モエさんの照準を絞る能力でもある、「特定の一人の背中に、声を届けるスキル」について話していただきます。
照準を絞る能力が高い人と言ってパッと思いつくのは、秋田県で活躍されている先輩方で言うと、あべ十全さんや、石垣政和さん、バリトン伊藤さん、保泉久人さん、シャバ駄馬男さん、高橋航さん、後藤良さんなどでしょうか。先輩方の番組を観たり聴いたりする度に、流石だなあといつも感じます。
モエさん、女性で言うとどなたが思いつきますか?

女性の先輩では、宇都宮貴子さんや、石川文子さん、多可享子さん、大島貴志子さん、桜庭みさおさんでしょうか。同世代では、山口靖子さん、柏木千春さん、村井絵美さん、椎名恵さん、藤田ゆうみんさん、小玉夕美子さんなどがいらっしゃいますね。

M大先輩や同世代でも、その「照準を絞る能力」のある方はたくさんいますが、実際秋田県のタレントさんたちでこのスキルを身につけている人は多くはないように感じます。

それが原因となって生じる「ピントのズレ」みたいなものがありますよね。
例えば、タレントを発注する側は、タレントのスキルの全体像が分からないまま「とりあえず女性二人いますか?」のように発注する場合もあるように思います。そうなると、依頼された側はとりあえずの女性二人を送り込み、現場に行ったタレントはよく分からないまま仕事をこなしてしまいます。

M人前に立って喋る仕事をしているなら同じように人前に立つ仕事として、コントやお芝居。モデルや司会やナレーター、ラジオパーソナリティーなど何でもできると思われがちなんでしょうね。制作会社や広告代理店、裏方の人たちの認識不足が原因でしょうね。

認識不足もそうですし、タレント事務所側が各タレントの強みを打ち出さなければいけないと思います。テレビを観た人は、観たままを捉えますから、専門外で仕事をしたタレントでは上手くこなせなくて当然ですよね。
このように色々なことが要因となっていると思います。タレントも自分の悪評判を聞くと委縮してしまいます。そうなってしまうと、タレントとしての活躍の場もつぶされてしまいますよね。きちんと確立した組織や認識不足のため、みんなが被害者になってしまっています。私は、誰も悪くないと思います。

M悪循環が生まれているのでしょうね。

はい、誰が悪いとか言う話ではなく、この悪循環が良くないと強く思います。それぞれの認識を明確にして、変えていかなければいけない時期ですね。

Mこの悪循環から抜け出すには、制作会社やタレント事務所関係者を変えるよりも、組織を変えていく専門家のような第三者に変えてもらうのがいいと僕は考えます。権力関係をバランスよく保つにはどのような配置がベストかなど、様々な分野の専門家がいます。そういう第三者に改革してもらうべきだと思います。

これまでこのままでもなんとかやってこれたので、まぁいいか。と、人は楽な方へ流れてしまいます。これまでの人たちだけでの変革は難しいので、ここで第三者である専門家のテコ入れが必要だと感じます。内側の人間も、ダイナマイトで爆発させるようなエネルギーのある人間も必要ですが。

Mモエさんは、カメラ目線一つとってもダイナマイトのような爆発力があります。セリフもきちんと覚えて、テレビの前で堂々とバシッと一発で決めていますよね。ナレーションのお仕事の時には、前日から徹底的に喉の調子を整えて、台本がびっしり埋まるほど内容を研究し繰り返し練習をしているのを普段から僕は見ています。

スタッフの方も、「モエさんは乗ってくると早いね!」と言ってくださいます(笑)

M関係者の方にも迷惑をかけず仕事を終えるプロ意識は当たり前のことですが、プロ意識のあるタレントは実際多くいないように感じます。タレントの意識改革も必要ですよね。

時折現場に行く前に私があまりにも緊張していると、Matirogさんが緊張をほぐそうと「1割程度の頑張りでいいよ」と言ってくれますが、私にとって1割の仕事の方が難しいんですよね。

M手の抜き方が分からないんでしょ?

はい、10割でやる方法しか分かりません(笑)

M手抜きの仕方が分からないという話で言うと、子育てに対してもそうですよね。「レトルトとかもっと使っていいよ」とか、「たまにはカフェでも行ってきなよ」などと言っても、真顔で「手抜きの仕方が分からない!」と言ってましたね。モエさんは常に全力で、全力が当たり前なんだと思います。

それを他の人に押し付けるのが良いことか分かりませんが、私のようなスタイルの人もいますよ。と言うことを知ってもらいたいです。「奪う気があるなら、奪え!」とワークショップの参加者たちに伝えたように、全力で挑んでもらい、それに対して全力で応えることが私のスタイルですから。
秋田県で様々なタレント活動をされている方に対してどうこう言うというよりも、業界全体の問題になってくると思います。以前、とある制作会社の代表がこんな話をしてくれました。「本当のギャラはいくらなんですか?他社からはいくらもらってるんですか?少し話にくい内容でも、もっと腹を割って話をすべきだ」と。
タレント個々の仕事のスキルや仕事に対するスタンスも大切ですが、曖昧になりがちなお金に関しても明確にすることで、業界全体の意識改革へとつながると思います。

M表現するスキルも一つの価値であり、その価値を会社へ提供し、その対価としてお金が存在します。等価交換するには、スキルによって、一定の相場や規定を設ける必要がありますね。

そうしないと、どんどん値崩れが起きますよね。秋田県に戻ってすぐのMatirogさんのギャラはどうだったんでしたっけ?

M漬物でした・・・。ギャラは2万円と聞いてたのに渡されたのは漬物で、あまりにも腹が立って夜中泣きながら自宅の庭にぶん投げてやりました(笑)  
母親にも「がっこ(漬物)をもらう仕事をする息子に育てた覚えはない!」と泣かれましたよ。
秋田県だけじゃなく、フリーランスの人はどんどん値崩れしている現象が起きていますね。

受け取り手側も、タダが当たり前のようになってきていますよね。海賊版の漫画の何がダメなの?という考え方の人も出てきます。作家さんが命を削って描いた作品を、海賊版でいいという考え方は間違っています。技術や表現のように見えにくいものでも、しっかりと価値を与える必要があります。適材適所を見極めていかなければいけませんね。

Mそうですね、自分の能力をわきまえて、出来ることと出来ないことを知らなければいけません。特に努力してもできないことをやっても仕方ないと思います。

148㎝の私が、今から身長170㎝の女性にはなれませんからね(笑)

M良い声も努力では得られませんよね。生まれ持った骨格や遺伝は、努力しても変えられません。アスリートもそうですが、僕は遺伝が99.9%だと思うんですよ。
努力すれば夢が叶うというのは間違いで、ひとつの思い込みです。努力しなくてもありのままの姿で出来ることは何か、また出来ないことは何かを明確に絞ると、自分の絶対負けない強みが分かります。その強みを様々な分野に対して網を張り巡らせて、そこにかかるものを確実に収穫していけば、苦労や努力はさほど必要ないと思います。マルチな才能がなくても、一つの強み、特技だけでいいのです。とにかく低い声が出せるだとか、美味しそうに食べられるとか、動物の声帯模写とかひとつの強みだけでいいと思います。

ここまで話してきたようなことがもっと業界の人たちに浸透していけば我々のフラストレーションも減って、win-winの関係も生まれますよね。

Mまずは僕たちから変えていかなければ。その一つの方法として、このウェブマガジンを通して一石を投じたいです。

波紋が広がっていくといいですね。

M今年は「モエ式」の予定はありますか?

やりたいですね!今年は息子の成長を見つつ、出来うるタイミングで色々活動し爪痕を残していきたいと思っています。すでに予定を組んでいるものもありますので、詳しくは私のSNSで配信していきます。

Mそれは楽しみですね。これまでやっていなかった分野でやってみたいことはありますか?

朗読やラジオドラマに挑戦してみたいです。大きな公演じゃなくてもいいので、コツコツやりたいですね。秋田県には良いものを持っている俳優が沢山います。その俳優たちを多くの人に知ってもらうために、ラジオドラマなどで良い俳優の芝居や声を届けたいです。また、秋田県の皆さんに、もっと定期的にお芝居が見られる場を増やしたいです。
そして、後輩たちの育成もしていきたいので「モエ塾」もやりたいですね。

M僕もモエさんの活動を支えるため、まずは家事を頑張ります!(笑)モエさん
ありがとうございました!
第一回目は、モエさんの「すき」な演劇、俳優業を「かち」に変えるヒントについてお話しいただきました。これから演劇を目指している人や現在活動中の方のヒントになれば幸いです。

「すきかちっ」余談

M3月より配信を始めたこのウェブマガジン、あなたの好きを価値に変えるヒント「すきかちっ」ですが、モエさんの案で最後に小さい「っ」を入れました。入れたのには理由があるんですよね?

「カチっ」という音がスイッチを押す音のようで可愛いなと。

Mナイスアイディアでした!ロゴもアシスタントに頼んでお洒落かつ魅力的な仕上がりとなりました!好きなことを価値に変えるスイッチを押すヒントを、秋田県で活躍している人たちとの対談で今後もお伝えしていきます。