極超(ハイパー)妄想イノべイター パート4



「村があるから村民がいるのではなく、村民がいるから村ができる」この印象的なコピーに込められた想い、そしてVol.5最終回では極超妄想イノベーター武田昌大の描く未来に迫る。さあ、そろそろあなたも納めどき!

インターパーソナルでの地方創生

M:Matirog :武田昌大さん M倒れてもすぐに立ち上がる武田さんですが、立ち上がるためのコツは何かありますか?

気持ちの上がり下がりが激しい日常ですが、下がったままだと仕事になりませんからね。お笑い番組が好きなので、落ち込んだ日はYouTubeでお笑いを見ています(笑)

M僕の場合、金曜日にラジオ番組の生放送を担当していますが、ラジオとそれ以外の仕事とでは使う脳が違うこともあって、放送後に反省したり、疲れが出ることもあるんです。それをリセットするために、僕もYouTubeでお笑いを見ることがあります。そういう時間って大事ですよね。

そうですね、笑うことで気分も変わります。

プロフィール:
1985年、秋田県北秋田市生まれ。kedama inc.代表取締役。立命館大学卒業後、東京の大手ゲーム会社に就職。秋田県活性化に本格的に取り組むため26歳で退職。2010年トラクターに乗る男前農家を集め秋田米ブランド「トラ男」を創設。
現在は2015年にオープンしたシェアビレッジの村長を務め、プロジェクト運営の全面に携わる。2017年には食とカルチャーの最新型長屋「おむすびスタンドANDON」を東京都日本橋にオープンさせた。

M1週間のうち、休みはどれくらい取れていますか?

取れてないんですよね。

Mないんですか! 講演もされてるようですが、年間何本ほどですか?

50本くらいです。地方の行政や、小・中・高・大学などから声をかけていただいています。

M50本というと、週1回ペースですか! お話しされる内容はどのようなテーマですか?

内容は多岐に渡りますが、トラ男であれば農業の話になりますし、シェアビレッジの場合は空き家問題や、移住定住の関係人口に関する話ですね。キャリア教育に関して講演するときは、働き方の紹介もしますし、参加者が東京の人の場合には、「二拠点居住」のような暮らし方の話をしています。



M地方と都会とを結びつける事業を展開している武田さんだからこそ、見えてきた問題があるのではないでしょうか。国を挙げて、地域おこし協力隊など地方創生の政策がなされていますが、すでに武田さんが実践されている“地方創生”について、お聞かせください。

“地方創生”と騒がれる前から活動していることもあり、それを意識して働いているわけではないので、“地方創生”という言葉を、僕らが自発的に使うことはありません。
と言うのも、地方創生がしたくて活動しているわけではなく、必要だと思ったことをしているからです。
全国に1718市町村ありますが、地方創生のために、観光紹介や移住定住を促すパンフレットを作って都会に発信したり、ホームページを作ったりと、どこも似たようなことをしているように感じます。そのため、都会の人たちから見ると、どこかの田舎に行ってみたい思いがあっても、移住定住候補の側が似通った紹介では、どの地域を選んでいいのか分かりません。

M選択肢がありすぎて決められないですよね。

地方創生がうまくいっている市町村では、まず人と人との繋がりが生まれ、その結果として人が集まっているように感じます。人との関係性をどのように築くかが、地方創生のテーマなのだと思いますね。観光や歴史、食などの特徴を生かすことがベースにある中で、そこにどのような魅力的な人がいるのか、誰とどう繋がっていくのかが大切です。

M大学生の頃、社会学の先生が「国際社会はインターパーソナルで成り立っている。つまり、国同士の関係を築くのは、個々で交わされるコミュニケーション、すなわちインターパーソナルだ」と言っていました。
例えばタイ人の友人がいたとして、タイで自然災害が起きたというニュースを見たときに、そのタイ人の友人を思い出しますよね。人と人との繋がりが大きくなったものが、国際社会なんだと思います。特に最近はSNSの普及で、行ったことのない土地に住んでいる人とすぐに繋がることもできますよね。その人と仲良くなれば、その人を訪ねて、その人が住む土地を知ることができます。個々のコミュニケーションが地方創生に繋がるんじゃないかと感じます。

人と繋がることもそうですが、実際に行ってみることも大切ですよ。行ってみて、移住定住に繋がることもあれば、単なる観光で終わることもあります。今の地方にとって大切なのは、その土地に人を呼び込むために、まずは行ってみたい気持ちにさせるきっかけを作ることです。

M色々な分野を渡り歩いている武田さんならではのアイディアがきっかけとなって、田舎へ住んでみようと思う人がどんどん増えるのではないでしょうか。

思いがある場所が、暮らす場所

M:Matirog :武田昌大さん 僕の居住地は秋田県ですが、年間を通して色々な土地に行っているため、実際に秋田県に住んでいるのは月に1週間程度です。残りの3週間ほどは、東京だったり地方だったり。そのため、家があるところが住んでいるところなのか、住民票があるところなのか、「暮らす」とは何だろうと考えるようになりました。
1か月を通して色々な土地で活動しているため、ほとんどがホテル滞在ですが、暮らしているなと感じる場所は秋田県だけです。それは何故かというと、“思い”が強いからです。
今後、人の住む場所や暮らし方、働き方や働く場所が選べるようになっていきます。東京にいたころは、家賃も高く、満員電車になじめなかったこともあり、暮らす場所というよりも、働く場所として生活していました。子育てや生活を考えると、やはり田舎の方が、環境が良いので、暮らす場所として地方が選ばれていくように変わっていく未来を想像しています。

Mコンパスで絵をかくときは、必ず中心点があり弧を描きますが、その中心点が生活の拠点とすると、その拠点となる軸が地方へ少しずつ移動していく流れにあるのかもしれませんね。

今はどこにいても働ける時代ですので、暮らす場所の選択肢も広がります。僕たちの活動で、秋田県や、それ以外の地方が選ばれるようになったらいいですね。

Mキーワードは田舎の人の温かさやぬくもりでしょうか。
僕の経験で言うと、家に帰ると玄関口に誰がおいて行ったか分からない山菜や野菜が置いてある。これって田舎ならではですよね。

僕も同じ経験があります! 先日、出張先の東京から秋田に帰ってきたら、玄関にスターバックスの袋があって、中をのぞいたら山菜が入っていましたよ。

M都会の玄関やホテルのドアノブに袋がかかっていたら警戒しますが、田舎ではそれを感じませんよね。色々網羅している武田さんだからこそ、働き方改革について話してほしいと願う方から講演の依頼を受けるのでしょうね。

色々経験しましたが、サラリーマン経験としては2~3年ほどなので、働き方についてはあまり分かっていませんよ(笑)

Mわずかでも、スポンジのような吸収力があるんですよ! 僕はゼロですから。
ときに、“交流人口”以上、“定住人口”未満として位置づけられる“関係人口”についてよく耳にしますが、武田さんは間接的にどのように関わっていますか?

お米を作る人と食べる人や、村と村民のように、その地域に住む人たちと別の地域とを繋いでいるので、結果的に関係人口を作っていますが、意識していたわけではありません。

M僕の考えですが、「三種町はジュンサイの町」のように、今後各市町村が独自のブランドを確立していく必要があると思います。三種町にはジュンサイ以外にも、梅やメロンがありますが、1718市町村の中で埋もれないためにも、一つに特化してブランド力を上げていくべきです。

各市町村の特性は大切にしなければいけませんね。

僕らなりの地方創生は、12のシェアビレッジを作ること

M:Matirog :武田昌大さん Mこれ以上、人口減少が進んでしまうと、各市町村が機能しなくなり、合併の加速化も進みます。合併も一つの策です。ただ、その前に各市町村の存在意義を明確にしていくべきだと考えていますが、武田さんはどう思われますか?

香川県に二村目のシェアビレッジがありますが、香川県と言えば“うどん”のイメージが強いですよね? ですが、僕が作っている香川県のシェアビレッジはうどんの町ではないので、うどんを売り出してはいません。シェアビレッジは日本の原風景を維持することが目的なので、何かに特化している町を選んでいるわけではないんですよ。
つまり、原風景をブランド化しているため、何かに特化していない方がいいんです。最終的に12のシェアビレッジを作ることを目標にしているため、村民はどこにいても村に行くことができるようになります。
観光ではなく、日本ならではの風景や暮らしに触れてもらい、その地域の住民と繋がれる場所、というのがシェアビレッジの目的ですから、観光地や特産物が存在する必要はありません。特別なものが無いからこそ、できることがあると思っています。
そのため、シェアビレッジの場所としては観光地ではなく、あまり知られていないような市町村の方が、魅力があります。シェアビレッジと地域間連携をしていくことによって、各市町村が盛り上がっていくはずです。シェアビレッジが目指していることは、日本の原風景をどんどん繋ぎ、都市から田舎、田舎から田舎、世界から日本に来るきっかけを作っていくことです。新しい人の流れを生み出していきたいですね。

M「村があるから村民がいるのではなく、村民がいるから村ができる」という言葉がシェアビレッジのHPにありましたが、正直なところ、僕はすぐにイメージがわきませんでした。

僕たちが描いている世界は、まだほとんどの人に伝わっていません。シェアビレッジはまだ2村しかないため、どのようなことをしているのか伝わりにくい。12村できたときに、初めてシェアビレッジのことを知ってもらえるんじゃないかと思っています。
例えば12か所あれば、ノマドワーカーの方も毎月場所を変えて1年を過ごすことができますよね。

M武田さんが深夜バスで見ていた夢はこれだったんだ! とみんなが気づく日が来るわけですね。

早くそこまでもっていきたいです。
香川県のシェアビレッジは、うどんに特化しているわけではありませんが、夕日がとても綺麗な浜があったり、みかんがすごくおいしかったりと、地域ならではの特徴がそれぞれあるので、その地域ならではの暮らしを楽しむことを体験できます。観光地や特産物がなくとも、その町の良さは必ずあります。埋もれている原石を見つけるのはとても楽しいです。

M磨けば光る宝石がたくさんあるんですね。

行政では、その町を売り出したいと考えますが、僕らは行政ではありません。僕たちだからこそできる地方創生の方法は、都会と地方を繋いだ大きな村を作ることだと思っています。

M最先端の発想ですよね。成功に向かって進んでいると確信しますが、そうなると、国の方から、国を挙げてやろう、武田君にお願いしたい! という流れになりそうです!
シェアビレッジのアイディアはとても新しいと感じますが、先頭を走っていると感じるのではないでしょうか。

先頭を切っているというより、ないものを作っているため、僕らはオンリーワンだと思っています。競合もあまり意識していません。僕、内閣府認定の地域活性化伝道師なんですよ(笑)

M周りが、武田さんに追いついたと思ったころには、武田さんはもっと先に進んでいますもんね。

常に先に進むことが大切なので、早く僕たちのビジョンを実現させたいですね。

Mこれからやりたいことは他にありますか?

僕の原点は、自分が生まれた北秋田市です。この町をなんとかしたい、元気にしたいという思いが僕の原点です。
ですが、実際、町が活性化しているかというと、まだ僕は何もできていません。30代では、地元の北秋田市で事を起こしていくことが目標です。秋田県に戻ってきてようやく1年経ったところで、色々な人と少しずつ繋がっていきましたが、まだまだ対話が足りていないので、もっといろいろな人と繋がり、この町にとって何が大事なのか、何をしたらいいのかを探っていきたいです。
認知度が低い北秋田市を盛り上げて、多くの人に知ってもらえるよう発信したいですね。
今後は北秋田市民ふれあいプラザコムコムで、セミナーも開催予定です!

M僕も参加させていただきたいです! 開催を楽しみにしています。
武田さんがセミナーやシンポジウムを開くことで、たくさんの人を呼び込むきっかけとなりますよね。

僕の田舎はインプットが足りないなと感じるんですよね。
色々な地域へ行って気が付いたのは、情報が足りている地域は最先端の動きをしているんですよ。町が元気な基準は、人が元気であることです。一人一人がポジティブに生きているかが大事です。ポジティブに生きるためには、良いインプットが必要だと感じます。
アイディア出し、ネーミング、情報発信の仕方など、ビジネスの起こし方のノウハウが、地域においては足りていないのだと思います。僕が地元でそういった勉強会を開くのもいいかなと感じています。

リアルな情報は直接会うこと

M:Matirog :武田昌大さん M先日、友人3人と僕の計4人で、自分が影響を受けたビジネス書をテーマに読書会をしたんですよ。本を持ち寄ってプレゼンしあったのですが、武田さんもたくさん本を読まれていそうですよね。

いえ、僕はあまり本を読まないんですよ(笑)

Mえ? 本当ですか? どうやってその知識やアイディアを生み出しているんですか?!

時間とお金はかかりますが、分からないことがあれば、とにかく人に会いに行って聞きます。インターネットや本の情報は著作者の思いがストーリーになっていて、自分が体験したわけではないので、あまり信じられないんですよ。以前は本を読むこともありましたが、他人の体験を自分に置き換えても腑に落ちないことが多くありました。
自分が体験して感じたことの方が、インターネットなどの情報よりも正しいと気づいたため、実際に動くようになってから、あまり本を読まなくなりましたね。
#02でお話したように「トラ男」プロジェクトを始める時も100人の社長(農家さん)に直接聞きに行きましたからね。

M100人に聞けるバイタリティがすごいですよ。本から吸収するのではなく、直接会って人から吸収するんですね。社長から聞いて、武田さん自身が得たエッセンスを話すセミナーがあれば、絶対参加したいです!

地方の人はアップデートするきっかけがないだけなんだと思います。今までのやり方はこうだという固定観念からアップデートさえできれば、どこにいても大差なく動けるはずです。

Mアップデートしたいけれど、やり方が分からない20代30代はたくさんいますよね。

そうなんですよ。携帯電話で例えましたが、地方の人はアップデートするきっかけがないだけなんだと思います。今までのやり方はこうだということをアップデートさえできれば、どこにいても大差なく動けるはずです。

Mアップデートしたいけれど、やり方が分からない20代30代はたくさんいますよね。

若い世代は柔軟なはずなので、考え方を変えるだけですぐに動けると思います。

Mサラリーマンだけが社会で生きていく道じゃない、自分で事を起こすスキルを身につけて、色々なプロジェクトに参加していってほしいですね。

例えばシェアビレッジの村民になって、週末だけ参加する形でもいいと思うんです。今年の秋にシェアビレッジで「一揆」(フェス)が開催されますので、ぜひこのタイミングで村民になって遊びに来てください!(笑) 
年貢(年会費)は3,000円なので、1日8円で村民になれますよ。

Mまずは年貢を納めるところからですね。

助太刀はパワー&スキルシェア

M:Matirog :武田昌大さん M数年前、僕がナビゲーターをつとめていた県政テレビ番組「あきたびじょん++(プラスプラス)」に、この自然と一体化した古民家特有の空間の中でハバタク株式会社の丑田俊輔さんと出演してもらったことがあります。
その時に一番感動したのはトイレがものすごく綺麗だったことです。

お風呂も綺麗ですよ!

M泊まることを考えたときに、やはり気になるのはトイレとお風呂ですよね。

水回りはしっかりしようと思い、そこにお金をかけました。

M茅葺もしっかりメンテナンスされていましたね。

村民は泊まるだけではなく、村民の力を村づくりに発揮してほしいという意味を込めて力を貸してもらっています。パワーシェアとスキルシェアの他力シェアとして「助太刀制度」を設けました。
地域のコミュニティが希薄になっていく中で、できないことがたくさん出てきます。
かつては集落で協力して葺き替えていたからこそ、茅葺屋根は維持できていましたが、今では人が減ってしまい、できなくなってしまっています。
そこで、村民の力を貸してもらうために、助太刀制度を作りました。稲の刈り取りも葺き替えも手伝ってもらっています。この5月に屋根の葺き替えをしましたが、村民もたくさん集まってくれてあっという間に終わりましたよ。

Mお水のボルヴィックを1本買うと、アフリカで10リットルの綺麗な水が生まれるように、自分の一つの行動が、誰かのために役に立っていると実感できることは、自分の存在確認や社会貢献、生きがいにも繋がりますよね。助太刀制度は、それが実現できるんですね!

屋根の葺き替えを手伝うようなパワーシェアだけではなく、村民になっているデザイナーが、五城目朝市のポスターを作ってくれたこともあります。また、村民にお医者さんもいますが、朝市に出店して健康診断をしたりなど、村民はスキルシェアとして助太刀することもできます。

M助太刀をする村民も、自分のスキルが役に立つのですから、楽しくて仕方ないでしょうね。みんながwin-winなのが、助太刀制度なんですね。
これからもどんどん新しいアイディアが武田さんから生み出されることを期待しています!貴重なお話の数々、ありがとうございました!
そして素晴らしいご縁を繋いでくれたT.Kくんもありがとう!

★次回配信★
山田さんの「看護師やめて、起業した。vol.6-#1」は8月27日配信予定です。
お楽しみに!

★予告篇★

SUKIKACHI Vol.6 from Phiomn on Vimeo.
Vol.6のゲスト 山田綾子さんの「看護師やめて、起業した。」は、8月27日から公開予定です。お楽しみに!